
TMSとは

TMSとは、経頭蓋磁気刺激法:Transcranial Magnetic Stimulationの略称です。
磁気によって脳内のニューロンを刺激し、脳活動を引き起こします。
以前より、うつ病は心の病気とされてきましたが、近年の研究から脳機能に問題が発生することから発症することがわかってきました。
TMSは脳の前頭前野を刺激し、機能的不均衡を正常化することでうつ病を治療します。
TMSは単発磁気刺激法、2連発磁気刺激法、反復性磁気刺激法(repetitiveTMS)の3種類に大別されます。主にうつ病治療に使われるのは反復性磁気刺激法であり、rTMSとの略称で表記されることが多いです。
rTMSは単発・2連発磁気刺激法よりも長い持続効果があります。中でも新たに開発された刺激様式のThetaBurstStimulation(TBS)は、従来のrTMSよりも弱い刺激で、より短い時間で、より長い持続効果を得られるということで注目されています。

TMSのメリット
薬に頼らない治療法
薬物療法に対して抵抗感のある方、薬物療法の効果が少ない方、薬の副作用にお悩みの方にとって一つの解決策になります。
高い安全性
TMSの重篤な副作用としてけいれん発作がありますが、発生頻度は0.1%未満であり、薬物療法と同等以下になります。
けいれん症状が出た場合も、その後けいれんを繰り返したり、新たにてんかんを発症したケースは報告されていません。
軽微な副作用として刺激痛、頭痛、顔面の不快感や肩こりなどが見られますが、ほとんどが処置中に限定したもので、治療を継続していくうちに慣れていく場合が多いです。
医療費負担が少なく済むケースも
治療期間が長引くほど医療費はかさみます。
月に2回、2年間通院した場合だと、処方されるお薬や診療内容にもよりますが、総額で30万円前後の医療費負担になります。
対してTMS治療の一般的な治療期間は週に5回の治療で4〜6週間です。
医療機関ごとに治療1回に必要な費用が違うことから一概には言えませんが、最近では1回の処置に対して1万円以下の設定をしている医療機関もよく見られます。
TMSの治療効果
TMS治療は、うつ病に対して高い効果を発揮することが、海外の臨床試験でも証明されています。
うつ病以外にも、OCD(強迫性障害)や双極性障害に対して有効であるとの報告も上がってきており、今後の治療領域の拡大が期待されています。
TMS治療の課題
万能の治療法ではない
TMSは必ず治癒する治療法というわけではありません。
薬物療法に対して全体的に高い治癒率であること、薬が効かなかったうつ病患者さんの3〜4割がTMSに反応しているのは事実ですが、反応を示さない方も多く存在します。
また、電気けいれん療法※と比較すると効果が劣ります。
※電気けいれん療法とは
電気けいれん療法はTMSと同様に脳を直接刺激する治療法です。
頭蓋骨は電気抵抗が強く、大脳を刺激するためには高圧・高電流を必要だったために痛みを伴うこと、また処置中に呼吸器系・循環器系の副作用が少なからず起こることなどから全身麻酔が必要であり、入院設備がある病院でのみ行われています。
電気けいれん療法の副作用としてはまず死亡が挙げられますが、確率は5〜8万分の1くらいで、一般的な外科手術の死亡例よりも低い確率です。
その他の副作用としては、健忘やせん妄などの認知機能障害も見られます。
入院管理の必要がありますので、医療費は高額になりがちです。
一般化には至っていない
アメリカにおいてTMS装置の利用認可出願は2006年になされ、2008年にはFDA(アメリカ食品医薬品局)より承認されています。
日本国内においても、2019年6月からTMSが保険診療適応になりました。
しかし保険診療を行える施設は160ほどと言われており、その中でTMS装置を持つ病院は限られています。
さらには「1種類以上の抗うつ薬で効果が得られなかった成人のうつ病の患者など」といった条件もあり、保険診療での治療を受けることができる方は多くはありません。
TMSの今後
日本国内のTMS治療には様々な角度から課題があるとは思います。しかし副作用などのリスクと効果を比較すると、優れた治療法だと思います。
今後は薬物療法や精神療法と共に、主たる治療法として普及していくのではないでしょうか。
また、TMSは現在も研究が行われています。
例として、今現在は持続効果が高い事からrTMSが主流となっていますが、使用される刺激電流の種類を単発・2連発磁気刺激法で用いられるものに変える事でより強力な効果を持つQPS(Quadro─Pulse Stimulation)が考案され、臨床研究が進行しています。
より良いTMS治療を、より安価に多くの人が受けられる日は遠くないかもしれません。
